我が社のオフィスは土足が禁止されており、それを破ろうものなら足首を蛭子能収の足首と丸ごとすげ替えられるという恐ろしいペナルティまで存在しているため社内で働くスタッフは全員「スリッパ」というものを履いている。
 
そして社内には2種類の「スリッパ」が存在しており、それは「内履き用」と「外履き用」と呼ばれ、オフィス内での使用と、ちょいと近所のコンビニまでコンニャクとシャーペンでも買いに行こうかしら的なときの使用に分けて使われる。
 
社内は僕も含めて全員IQが2強しかないので、内履きと外履きがわからなくならないように用途別にスリッパの色を分けて区別できるような工夫も凝らされており、非常に親切な設計となっている。
 
にも関わらず、にも関わらずにだ。
内履き用のスリッパで外履き用の区域であるトイレに行ったりしている痕跡が見つかった。これは由々しき事態である。
 
履き替えることを面倒くさがり、神聖な内履き用のスリッパを外界のおぞましく汚れた床に使う者がいる。悪の所業だ。足首を蛭子能収の足首と丸ごとすげ替えるどころのペナルティでは済まされない。スタンスミスのおっさんの絵の部分が蛭子能収の顔イラストに変更されているやつを死ぬまで脱ぐことも許されず履き続ける刑に処されても文句は言えないだろう。
 
すぐさま僕は社内で緊急スリッパ会議を行うことにした。
世の中には仕事の会議よりも大事なことがある。それがスリッパ会議だ。
 
僕は社内にいる者たちを会議室に集めた。
透明性を保つためにツイキャスで会議内容も放送することにした。
 
テーブルには外履きのスリッパが置かれてる場所に脱ぎ捨てられた内履き用のスリッパの証拠写真が叩きつけられ、犯人探しが始まった。
 
各々が「わたしは犯人ではありません。なぜならマイスリッパを使用してるからです」といった主張をし始める。その中にはマイスリッパではあるものの、ゲロから作ったお好み焼きみたいなマイスリッパを履いている不届き者もいた。外履き用よりも明らかに汚かったのでその場で別の社員に裂かれていた。
 
とはいえ、自ら「私がやりました」なんて名乗り出る者はいないだろうし、捜査は難航を極めると思われていた。尋問のためにAmazonで鉄の処女(拷問器具)の購入を色違いで数点考えていたほどだ。
 
しかし、意外なほどあっけない理由で犯人がわかった。
リークである。
 
最近入ったさかなクンに似た20歳のインターン生が「ぼく見ましたよ。ARuFaさんです。」と華麗に先輩を売ったのだ。
 
そこには先輩をかばいシラを切り通す情なんてものは一切なかった。キラキラと光る瞳で僕に褒められ待ちをするインターンがそこにいた。そしてその横にはナッパが口から怪光線を出す寸前のような口を大きくあけて止まっているARuFaが。
 
そこからARuFaによる醜い言い訳が始まった。
 
「自分はスリッパを履かない人間だ。ずっと靴下で過ごしている。」
 
「だから自分には内履きも外履きもない。」
 
「トイレにも靴下で行っている。」
 
ダウトだ。
明らかにおかしな発言が混ざっていた。
 
100歩譲って内履きスリッパでトイレに行くのは許したとしても、靴下で行ってるのはダウトだし、アウトだ。
 
男子社員が床に撒き散らした黄金水を彼の足を包む綿はたっぷりと吸収していたはずだ。そして染み込ませた状態で内履きスリッパでいか許されない聖域を闊歩していたということだ。それは蛭子能収の顔のアップリケを両肘、両膝に処方されてもしょうがないと言える愚行。本人だけではない。一族郎等すべてにアップリケの責任は発生するだろう。
 
こうして、株式会社バーグハンバーグバーグの第一回スリッパ会議は幕を閉じた。スリッパは恐ろしい。平和だった社内を地獄のような景色に変えてしまう。しかし人と人が共存生活を送るには守られるべきルールが必要だ。
 
それ以来、社内で「ARuFaくん」と呼ばれていた者は「ションベンの足」略して「ション足(ソク)」と呼ばれている。