はじめまして。
4月からバーグハンバーグバーグに入社しました。新入社員のかまどと申します。
これまで2年半ほどオモコロライターとして関わらせていただいておりましたが、このたび縁あって声をかけてもらえました。
「漫画にありがちな○○ 10選」みたいな記事をよく書いていたので、漫画好きの社員の目に止まったのかもしれません。漫画、読んでおくもんですね。
最近のオススメはジャンプ+で連載中の「とけだせ!みぞれちゃん」です。よろしくお願いします。
とはいえ僕もこれからは会社員。漫画ネタだけでなく新入社員としていろんな業務に励みたいのですが…
なんか…
どうも…
馴染めてない気がする。
はじめましての環境で、自分がどういう挙動をして良いやらわかりません。何をするにも「変に思われないかな」という思考で頭がいっぱいです。
それもひとえに…
いま全国の新入社員・新入生が同じことを思っているのでは? そんなことない?
コミュニティに馴染もうと気合いを入れる
↓
慣れてないので空回る
↓
自分でも気付かないうちに致命的に調子こいたマネをする
↓
BAD END
こんな現代の畜生道を行くことになるんじゃないかと気が気じゃありません。
何をするにつけても「今ので嫌われたんじゃないだろうか」「今ので変だと思われたんじゃないだろうか」と人目を気にしてばかりです。
入社して1週間以上経ちましたが、いまだに社員の皆さんが僕のことをどう思っているのか気にし続けています。
考えすぎでしょうか?
「俺はデキない奴だと思われていないか」
「俺は積極性がない奴だと思われていないか」
「俺のいないところで悪口を言われてないか」
そんなことばかりを問いかけ続けています。
根暗の尾崎豊が歌うシェリーってこんな感じなんだろうな。
みなさんPCに向かって仕事をしているように見えますが、僕のいない社内チャットで新人の陰口を叩いているような気もしてきます。
考えすぎでしょうか?
自意識過剰なのは自分でも分かっているんですが、一度考え出したらキリがありません。
これまでの29年間を卑屈なまま生きてきたので、ここぞというときに全く前向きになれないカラダになってしまいました。
業務中は社長自ら手取り足取り仕事を教えてくれるのですが、それでも安心できません。
内心は「新人教育くそダル~」と思っているかもしれないからです。
社員の皆さんも、親しげに話しかけてくれるのですが…
実際は、無理やり合わせているだけかもしれません。
「へえ? 新人のくせに早く帰るんだ?」と思われるのが怖いので、誰かしら退社してからじゃないと帰ることができません。
「におうなぁオイ」と思われるのが怖いので、コーヒーを飲むときはベランダに避難するようにしています。
みんなと仲良くなりたくてお土産を買ってきたのに「お土産どうぞ」の一言が言えず、いまだにデスクに隠したままになっています。
こんな自意識過剰な振る舞いが癇に障って、すでに嫌われている可能性も…?
考えすぎでしょうか?
本当に?
本音を引き出そうと直接聞いても「考えすぎ」「誰もそんなこと思ってない」の一点張りです。
そう言っておけば「な~んだ。気にしすぎかぁ〜」と安心するようなチョロい人間だと思っているのでしょうか?
彼らは僕のことをどう思っているのでしょう…。
なあ。
どう思ってんだよ。
ということで、社員の本音を聞き出すために「アンケート」を作ろうと思います。
「かまどのことをどう思っているのか」が知りたいし、ぐっすり眠れるようになりたいから。
悪口を言っているなら早く明らかにしてほしいし、安心したい。
アンケートを作ろう
「俺の番でトナー切れになるなよ…」
と祈るように印刷したアンケート
本音を聞こうにも、ただアンケートを作るだけでは、そもそも誰も協力してくれない可能性すらあります。
「新人が社内アンケートだァ? 調子こきやがってよォ…」と悪口を言われるかもしれません。
いや多分言われる。
むしろ言うに決まってる。絶対言う。
よしんば言ってなかったとしても僕がそう思ってしまった時点で、言ってるのと同じだから。
本音を引き出すためには、快く協力してもらえるようなアンケートを作る必要があります。
そこで、アンケート作りにおいて、コレを大いに参考しようと思います。
みんな大好き少年ジャンプ!
今週号読みました?
相変わらず「Dr.STONE」面白いですよね。
ジャンプに毎回ついているアンケートハガキ
これはジャンプ漫画への感想などを送るためのもので、このアンケート次第で漫画の序列や連載期間などが決まるんだとか。
漫画の運命を決めるほど重要な存在とあれば、そこにはアンケートに関する様々なノウハウが詰まっているに違いありません。
ジャンプをお手本にアンケートを作れば、きっと回収率も上がるに違いないのです。
ということで、ジャンプのフォーマットをお手本にアンケートハガキを作ってみました。
きっと社員の皆さんの本音が聞けるはずです。
さらにジャンプのアンケートには、読者が答えたくなる工夫も施されています。
それが懸賞プレゼントキャンペーン。
ただ「アンケートに答えてください」だけでは、協力してくれる人も限られてきます。そこで、ジャンプではアンケートに答えた人の中から抽選で豪華商品が当たる企画を毎週行っているんです。
僕はジャンプの中でもこのページが大好きで、毎週欠かさずチェックしています。
賞品が欲しいというのももちろんありますが、何よりこの懸賞ページ自体も程よいユーモアが散りばめられたゴキゲンな出来なんです。
例えば今週号のジャンプを見てみましょう。
(引用元:週刊少年ジャンプ第19号)
ほら。見てよ、この完成度。
懸賞ページは毎回いろんなテーマをもとに作られているんですが、今週は「エスパー」のようです。
このモデルの方も程よくていいですよね。
ユーモアが最前面に貼り付けられた表情とか「何かで吊ってんだろうな」って感じのマントとか最高じゃないですか?
(引用元:週刊少年ジャンプ第19号)
「欲しいもの満PSY」に「エー級スーパー豪華」よ?
この辺の言語センスとか冴え渡ってますよね。
各商品にもエスパーになぞらえたそりゃあもうナイスなキャッチコピーがつけられています。
スマホには「テレパシーいらずの通信機器たち!!」とか。
チェキには「その場で念写!?」とか。
どうですか? めちゃくちゃ程よくないですか?
僕だけですか? 盛り上がってるの。
ジャンプがいまだに少年誌のトップを走り続けているのは、こうしたユーモラスなアンケートで読者とのコミュニケーションを図っているからに違いありません。
これだ…!
ということで、僕もジャンプにならってゴキゲンな懸賞ページを作ることにします。
いい湯加減のユーモアを添えれば、社員のみなさんとのコミュニケーションも円滑になり、アンケートの回収率も上がるはずです。
絶対そう。だってジャンプがそう言ってるんだから。
懸賞ページの肝はやはりダジャレ満載のタイトル。
今週は「キミの望みをお見透視!ほしいもの満PSY!エー級スーパー豪華グッズプレゼント!」でしたが、これだけでなく毎週確度の高いダジャレタイトルが量産されています。
例えば、「フィギュアスケート」をテーマにした回では…
当たルッツ!おめでトゥループ!胸に刺サルコウ!
金メダル級グッズプレゼント!
3回転スピンのような怒涛のダジャレ連打が素晴らしい。胸に刺サルコウというひねりのきいたダジャレがまさにジャンプ懸賞ページって感じです。
聞くところによると、この懸賞ページはジャンプ編集部の新入社員が担当する慣例になっているんだとか。
新人にしてこんなにユーモラスだなんて。 同じ新入社員として頭がさがる思いです。
今年の始めには「お正月」をテーマにしたこんなタイトルも。
いつもより春迎(しゅんげ〜)当たりを乱れ打ち!
ハン羽根(パネェ)ツキまくりグッズプレゼント!
春迎を「しゅんげ〜!」ハン羽根で「ハンパねえ」と読ませるユーモアの力技には驚かされますね。
その上、「羽根つき」と「当選する幸運」をかけて「ツキまくり」とした技巧も光ります。大味に見えて実は隙のない構成なんです。
映画「ボヘミアン・ラプソディ」が大ヒットしていた時期には…
その魅力ハズレナッSing!伝説のオモロックスター
イッパイクレディ・マーキュリーが贈る
コレイーヤン・ラプソディ グッズプレゼント
ユーモアの過積載。
「コレイーヤン・ラプソディ」とダジャレるセンスもずば抜けています。
「賞品がいっぱい当たる!」というワクワク感を表現した「イッパイクレディマーキュリー」も完成度が高いと思いませんか?
個人的に、今年の懸賞ページタイトルの中でも最高峰の出来だと思っています。
俺もなりてえよ、オモロックスター。
「友情努力勝利」に次ぐジャンプの方程式
「何かしらのテーマになぞられた程よいダジャレ」これがジャンプの読者アンケートの真髄と言えるでしょう。
ちなみに去年は映画アベンジャーズをテーマにした「景品アゲルンジャーズ」というのもありました。素晴らしい。
僕もこれらを大いに参考にしてゴキゲンな懸賞ページを作ろうと思います。
とりあえず、何かしらのテーマが必要なので、今回は「落語」としましょう。
なんで? と言われると「好きだから」としか言えません。
でも、それを言い出したら今週のジャンプの「エスパー」もなんで?って話じゃん。
とにかくダジャレを量産する土壌となるので、懸賞ページ初心者の僕は自分がよく知っているテーマに設定するのが良いでしょう。
そう思うと「エスパー」であれだけのもんを作り出したジャンプはすごいな。
さっそく着替えます
落語家のコスプレをするために着物を持参しました。憧れだったジャンプ懸賞ページと落語家に同時になれるとあって、この段階からワクワクが止まりません。
これは余談ですが、少年ジャンプの看板漫画「ワンピース」は落語が元になっている小ネタが満載なんですよ。
パンクハザード編で錦えもんが体を真っ二つにされたまま生きていたシーンは、明らかに「胴斬り」という落語が元ネタになっています。
「ジャンプ」と「落語」は意外と縁があるのかもしれませんね。
着物になると不思議と身が引き締まります。へへ。
これも余談ですが、ワンピースのキャラ ブルックが放つ必殺技「鼻唄三丁矢筈斬り」も「首提灯」という落語に出てくる剣技が元ネタなんですよ。
皆さんもこれを機に落語を聴いてみては?
さて、懸賞ページを賑やかすためにはコスプレだけではなく、読者の射幸心を煽る賞品画像も必要です。
これについては手近にグッズもありません。まあ、画像さえあれば大丈夫でしょう。
仲良くなれるかも分からない人たちのために身銭を切って賞品を用意するのはリスクですしね。
とりあえず会社の備品を盗撮して賞品としました。
楽屋荒らしの前座見習い
社内を物色したところ賞品っぽいものをいろいろ見つけたので、これらをグッズとして採用。懸賞ページを彩る役目を担ってもらいます。
例えば…
フロアの隅で完全に活動をやめていたルンバ
いかにも賞品っぽいので採用。うっすらホコリをかぶっていた哀愁漂うルンバです。
ホコリをかぶったお掃除ロボの姿は、なんだか「風刺だな〜」と思いました。
目玉賞品のニンテンドースイッチ
本場の懸賞ページでもよく登場する人気賞品です。会議室に置いてあったので隙を見て盗撮しました。
なぜ会社にゲーム機があるのかは不明ですが、懸賞ページには不可欠なアイテムなので助かります。
人骨
キレイに白骨化したおもちゃ。関節の部分に見たこともない繊維が絡まっていましたが、あれが筋繊維だとしたらマジの骨かもしれません。
鉤爪つきのえっぐい棒
倉庫を漁っていると普通の凶器を発見しました。攻撃力が高そうなのでこれも賞品にしましょう。
いやに優しい目をしたシマウマ
社内で妙な存在感を放ち続けるこのシマウマも賞品に……
……。
なんだこの会社。
ちょっと社内を一周しただけでよく分からない奇品が次々と出てきました。リサイクルショップの卸問屋かよ。
収集したものはザッとこんな感じ
ともあれ、賞品っぽいものはあらかた集まりました。会社の備品で取り揃えたとは思えないラインナップですが、懸賞ページの賑やかしにはピッタリだと思います。
材料は揃ったのであとは組み合わせるだけ。
着物姿の僕に、これらの写真と程よいユーモアをぶち込んで懸賞ページを完成させました。
こちらです。
OK、かなり程よい。
天下のジャンプが築き上げたアンケートの極意をフル活用しました。
懸賞ページといえば常用の範囲を超えたゴキゲンな表情。
「今こそこれで遊ぶ時そば!!」という逃げ切り型のダジャレもイカしてます。
おめ伝統(でんと〜)は かなり程よい
「少年ジャンプの懸賞ページあるある」がどれだけの人に通用するかわかりませんが、「当たっ亭もろ太」みたいな良い温度感の名前とかありがちですよね。
本家にも、過去に「ゲームマイスター迎夢(げいむ)持太郎(もちたろう)」とかいたしね。あと「愛に飢えすぎ謙信」とか。
昔からの夢だった「懸賞ページになる」が実現できて満足です。
そういえばアンケートのお供でしたね。退社するついでに配っておきましょう。
先ほど作ったアンケートハガキを添えて
社内の共有スペースに展開
良い加減のユーモアに心がほぐれた社員たちは、きっと本音をさらけ出してくれることでしょう。
今夜からゆっくり眠れそうです。
………
……
…
…
……
………
……。
バカか俺は
一夜明けて全てがクリアに見えてきました。
僕は何をしていたのでしょう???
完全にやらかした。
なんだよ、自分を使ってジャンプの懸賞ページを作るって。
ジャンプ編集部もしねえだろ。そんな愚行。
なんですか? これ
日本文化にはしゃぐ留学生???
入社以来「変に思われないように」とイジイジしていたくせに、たった一手でバーストしました。これは完全にやってる。
テメエで言っといてこのザマです。
気が気じゃなかったんじゃねえのかよバカヤロウ。ぶん殴るぞ。
誰をって俺をよ。
こんなものを社員に見られるわけには行かない…。
朝イチで誰よりも早く出社し、社員の目に触れる前にアンケートを処分しなくては……。
あっ…あぁ〜〜
だいぶ集まっとる……
読みたくねえ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
どうせ悪口雑言が書かれてるんだろうが。
クソが。クソがよ。
もうここまで来たら逃げも隠れもしねえ。
社員ども。お前らが「かまどに対して何を思い何を考えているのか」胸に刻んでやるよ。
見せてみろや!! チクショウ!!!
社員のアンケート結果
拍子抜けするくらい向社会的な回答
可愛らしい丸文字にプリティなイラスト。明らかに女性社員のものです。
バーグハンバーグバーグはほとんど男性社員で構成されているので、女性というだけで誰のコメントかほぼ特定できます。
「仲良くしてね〜」とありますが、これを真に受けるほど僕はウブではありません。匿名性がないため、本音が引き出せなかったと見るべきでしょう。
…と思ったら、裏面のフリースペースに柿の鬼? が描かれていました。なぜ?
前言撤回。これは女性社員じゃないかもしれません。
女性は語尾が「なのら〜」なキャラクターなど描かないでしょう。誰だこいつは。
他には…
メカが書いたん? という無機質な文字
嫌がらせの手紙を書く人は、筆跡で特定されないように定規を使って直線で文字を書くことがあると聞きます。多分これはその手法でしょう。
悪口を書いた奴は筆跡で特定しようと思っていたのですが、普通に見透かされていました。
裏面を見ると…
急に人間味が溢れ出した
すみません。筆跡がうんぬんは気のせいでした。なんだったんだ。
いやまあ、令和ね。良いと思うけど、かまどへのコメントは?
これは新入社員への本音を語るアンケートなんだから、なんかもっとあるだろ。
「新人はこうあれ」というアドバイスとか懸賞ページへの感想とか、あるだろ。
悪口でも建前でもいいから何か書いてくれ。
なんでもいいから…
何か…
…
文房具コーナーの試し書きかよ
ダメでした。社員の本音どころか、これを書いた人の意思すら見えてこない。な〜〜〜んにも読み取れない。
社内アンケートでボールペンの書き味を試さないで。
なんか…令和のサイン考えてない?
どうもアンケート紙ではなくちょうどいい落書き紙として認識されてしまった気がします。
ほら、ね。
一通、まじで何も記入されていないアンケートがあったんですが…
裏には何かがさらにおいしくなったことを示すシールが貼ってありました。
もはや字すら書いてくれないのか。
完全に何かをこぼした痕跡があるハガキ。
裏面には…
めちゃくちゃウソが書いてありました。
他は、
・数枚にわたってインターネットで検索してはいけない言葉を羅列したもの
・赤ペンででっかいナイキのマークを書いたもの
・達筆な「マミーDのポコチン」
とかだったので省略します。
あと、ナマケモノのキーホルダーと6円。
うん…
この人たち何も考えてねえわ
ちなみに…
その後、社内チャットに侵入し、入社以前の過去ログを漁っていたところ…
先輩の方が一枚上手でした。